子どもには成長する力がある
教師の役割はそのきっかけとなる
幅広い経験の機会を与えること

クラスの子どもたちに教え、教えられる日々の中で学んだことを返していきたい

小学生の頃、クラスでは目立たないタイプの子どもだったと振り返る羽野知里さんには、のちに教師をめざすきっかけとなった出来事がある。小学校の担任教諭が、家庭訪問で自宅を訪れた日のことだ。
「その先生は、事細かに『学校での私の様子』を母に報告してくださったと後で聞きました。先生が自分のことをしっかりと見てくださっていたことに感動し、とても自信がついたのを覚えています。この時から、将来は教師になりたいと考えるようになりました」
笑顔でそう話す羽野さんは、現在、私立清泉小学校の2年生の担任として34人の児童と向き合っている。
「この子たちを1年生のときから受け持っています。入学した頃に比べると、皆それぞれ成長しました。同時に、私も教師として日々成長させてもらっています」
授業をするだけが教師の仕事ではない。一人ひとりを大切に、常に丁寧に子どもと向き合うことを心掛けている羽野さんだが、時間に追われて行き届かず、反省することも少なくないという。ある日、子ども同士のトラブルが起き、仲裁に入ったことがあった。その場で双方の話を聞いて一件落着したかに思えたが、実は一方の子が自分の気持ちをうまく伝えきれていなかったことが後になってわかった。羽野さんは解決したものと早合点してしまったことを悔やんだという。
「今度は、その子が自分の言葉で話せるまでゆっくり待つことにしました。その子は、気持ちを伝えることが得意ではなかっただけだったのです。それ以来、いろいろな場面で前よりよく話をしてくれるようになりました」
こうして、子どもの側から教えられる場面も多いが、教師として学んだことは、また子どもたちにも返していきたいと考え、日々ベストを尽くしている。

授業で、クラブ活動で”経験”から教わることの多さを学んだ大学時代

「聖心の初等教育学専攻の学生は、皆、真剣に教師をめざして勉学に取り組んでいる人ばかりでした。そうした私たちに、先生方は実践的な活動の機会を豊富に設けてくださいました。例えば、『学生による模擬授業』では、実際の授業を想定して仲間とともに準備をする過程で今の基盤となる多くのことを学びました」
大学で先生方が学生にこうしたチャンスをたくさん与えてくれたように、今、羽野さんも子どもたち自身が活躍できる機会を数多くつくるよう心掛けている。
「子どもたちが自ら成長するきっかけをつかめるよう、授業や行事、学級活動で、さまざまな経験の機会を設けることが、教師の役割だと思っています」
羽野さん自身は大学時代、教師をめざして勉学に励むかたわら、グリークラブの活動にも打ち込んでいた。心を一つにしてハーモニーを響かせる合唱を通して、人間関係において大切なことに気づかされたという。
「合唱は、自分の声だけを聞いて歌っていたら、絶対にまとまらないのです。特に私はソプラノとアルトの中間のメゾソプラノでしたので、上下の音をよく聞いて歌うと、自ずと心の一体感が生まれました。今でも子どもたちと関わる中で、度々このことを思い出しては、『よく聞く』ということを自分に言い聞かせています」
充実した学生生活の経験から多くのことを学び取った羽野さん。子どもたちがたくさんのことを経験し、自ら成長していけるよう、共に学び続けている。

羽野 知里
学校法人清泉女学院
清泉小学校 教諭
教育学科 初等教育学専攻
2012年3月卒業

 
 

※ 2015年度版掲載。所属・肩書きを含む記事内容は、掲載当時のものです。