教育環境が人を育てる
その信念のもと 幼児教育の大切さを発信する

子どもたちの発想力を大切に
主体性を伸ばす手助けをする

椅子や机などだけが置かれた空っぽの保育室。入園する子どもたちにどう成長して欲しいか、それには何が必要なのかを考えながら、東南さゆりさんは保育室をつくっていく。例えば、保育室の片隅に虫の籠を置くと、興味を持った子どもが籠の周りに集まり、最終的にはクラスの子どもたち全員が虫に興味を持ち始める。このように、「○○しなさい」と教師が指示するのではなく、興味や関心を惹くことを意図してつくった「環境」を設定することで、子どもの主体性や協調性を養う。
東南さんが幼稚園教諭になる決意を最終的に固めたきっかけは、卒業後、東京学芸大学の大学院で学んでいた時、偶然参加した研究会だった。聖心女子大学時代の恩師の一人が主催するその研究会で数多くの事例報告を聞く中で、子どもたちが主体的に行動できるように幼稚園の教師たちがそれぞれに創意工夫を凝らしていることに感銘を受け、心が動いた。子どもは元来、主体的な存在であり、主体性を伸ばす場を、教師が設定することでつくり出せることに魅力を感じ、直ちに公立幼稚園教諭の採用試験の準備を始めた東南さんは、見事合格した。
もともと物をつくったり、ダンスをしたりとクリエイティブな活動が好きで聖心女子大学に入学した。学科や専攻といった区分にとらわれずに学べるリベラル・アーツ教育に惹かれたためだ。ゼミでは美術教育が専門の教授のもと、子どもの自由な発想を伸ばす美術教育について学んだ。
「卒業を控え不安だった時期、ゼミの先生が『東南さんは、そのままで大丈夫だよ』と励ましてくださったことをよく覚えています。ゼミ合宿での経験も印象に残っています。真っ暗な夜の森の中でゼミ生たちとその時感じたことを話すのですが、仲間とゆったりした時間を過ごすことで自分の気持ちに向き合えた貴重な機会でした」
「聖心では人と人のつながりを感じる」と東南さんはいう。相手のために自分が何をすれば良いかを考えている人が多く、温かな環境があった。

自らリーダーシップをとって環境をより良く変えていく

大学時代、東南さんは「園芸クラブGreen Thumb」に所属。キャンパス内の畑で何種類もの野菜やハーブを育てていた。収穫物は部員たちで味わうだけでなく、聖心祭でも販売した。
部長を務めた時は、販売ブースに趣向を凝らし、フランスのマルシェ(市場)をイメージして装飾を施した。買う人の視点で考え、どのような装飾にしたら素敵に見えるかを意識。結果的に女子大生らしい可愛いブースとなり、販売促進にもつながり、自信がついた。
こうした学生時代の経験は仕事にも生きている。保育室の壁に貼る掲示物を工夫したり、子どもの製作活動で創造性を培うような素材を用意するなど、子どもたちの興味・関心に寄り添いつつ、それを高めるような環境づくりを意識している。
「椅子を置く場所一つとっても、子どもにとっては生活を構成する大事な要素。成長に合わせて、その時々で経験させたい『ねらい』に応じた環境につくり変えていく必要があります」
聖心女子大学には「社会のどんな場所にあっても、その場に灯をかかげる女性となりなさい」という初代学長の言葉が受け継がれている。園芸クラブの部長経験をはじめ、リーダーシップを発揮する機会が多かった東南さんは、環境が人を育てるという信念のもと、自ら提案することを心掛けている。
「会議で誰も発言しなかったら何も生まれません。私自身も環境の一部ですから、自ら提案してよりよい環境をつくり出したいと思います」
待機児童問題など幼児教育に関連した最近のニュースの多くが、教育内容自体を扱うものではないことが残念だと東南さんは感じている。だからこそ、子どもたちと直接向き合うこの仕事を通して日々実感する幼児教育のクリエイティブな面を社会に発信していきたいと願っている。

東南 さゆり(とうなん さゆり)
谷区立本町幼稚園 教諭
教育学科 初等教育学専攻
2014年3月卒業

 
 

※ 2018年度版掲載。所属・肩書きを含む記事内容は、掲載当時のものです。